鏡の裏のパンケーキ

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(殴り書き)好きな人に執着して絶縁された話。

※多少のフィクション入れています

 

6年間、友人を縛っていた。

 

中高一貫校に入って初めての授業。ペアで行う自己紹介。私が知らないアーティストが好きだと言う彼女はどこにでもいそうな女の子なのに私にない部分を沢山持っていて、羨ましくて、惹かれた。

背が高く、理知的な思考、裕福な家庭、綺麗な二重。まるでおとぎ話に出てくるお姫様のようだと感じた。

 

私たちはいつも2人だけで過ごした。スキンシップの激しい私は同性の友人にハグしたり密着したりが多かった。

それ故彼女と2人でいる時は思春期の同級生見ると恋人同士のソレに見えたらしい。からかわれ、彼女は嫌がり私のスキンシップを拒絶した。一回目の大きな拒絶である。

 

3年生になってクラスが分かれ、彼女が1つのグループに入った。お昼ご飯もそのグループで、体育のペアも、休み時間も、移動教室も。学校という小さな世界で私たちは2人きりではなくなった。


私よりも好みが合う、思考が合う同級生に嫉妬した。

 

その子達のことが直ぐに嫌いになった。

 

あなたなんて、私よりも勉強が出来ないくせに。自分の方が優れている分野を引き合いに出して頭の中でボコ殴りにした。

彼女とペアになれないからという理由で、修学旅行も欠席した。先生には旅行費が払えないということにした。彼女からのお土産はなかった。


高校になって、そのグループの中に私という異分子が入り、時たま彼女が嫌悪感を示す様になった。私がグループ全体を好きなわけでなく、彼女が好きということを感じ取っていたのか、

彼女が私と2人きりで居ようとすることを拒むようになった。

 

それでも私は彼女が好きで、神格化し、崇拝し、執着していた。


中学からの同級生達は私が彼女が最優先ということが当たり前になっていて、自然と2人にさせてくれた。


その環境が尚更彼女の自由を奪っていた。

 

そして年々重くなっていった友愛を超えた私の感情により、2回目の大きな拒絶が起こった。受験真っ盛りの秋だった。

 

「お互いのために暫く距離を置いた方がいい」

 

彼女の自由と、私の自由を考えた上での提案だった。数年間彼女の事を想い、頭の半分以上は常に彼女の事があった私は受け止めきれず錯乱した。沢山泣いた記憶はあるが、私は彼女に謝れていただろうか。彼女の辛い思いを考えることができていただろうか。

 

想いを拒絶されたという事実しか受け止められず、彼女に何も言えないまま、距離を置いたまま卒業した。

 

大学生になったら東京にあるパンケーキ屋さんに行く約束は果たされなかった。

 


好きになろうとしたけれど、好きなふりをしたけれど、
彼女の好きなアイドルが嫌いだった。彼女の好きなキャラクターが嫌いだった。彼女の好きな俳優が、歌手が、友人が、全てが嫌いだった。今でも変わらないしこれからもそうだろう。それが私の恋のやりかただった。

私にだけお土産をくれた事、家庭が本当に辛くて自殺しようとしていた時、重い重い感情を乗せた「好き?」というメールに「好きだよ」と茶化さずに言ったこと。誕生日に花束をくれたこと。夏祭りでその場のノリでおもちゃの指輪を左手の薬指にプレゼントしてくれたこと。


全てが恋だった。
全てが彼女の善意であった。

 

彼女は恋心なんて、私に1mmも抱いていなかったし、後半になると真逆の感情である恐怖を抱いていた。

 

ジュエリーケースの中には今でも恋心が詰まった指輪が入っている。

 

6年間じわじわと彼女を呪い、私たちの関係を呪った、私の恋心。

 

彼女に会ったらどうしてしまうだろうか。

 

見つからないように避けてしまおうか。見つかってしまったら?話しかけてしまったら?数年前より少しだけ大人になって、色々なことを知ってしまった私はもう後戻り出来ないかもしれない。

 

今度こそ、と彼女の手を掴むかもしれない。

 

私は彼女に会いたくない。
私は彼女を幸せに出来ないから。

 

私は彼女の6年間の青春と、自由と、出来るはずだった思い出を奪った加害者なのだから。